スパークリングワインの造り方|瓶内二次発酵を解説

スパークリングワインの泡はどう生まれるのか。瓶内二次発酵(伝統的製法)の仕組みを、一次発酵から澱抜きまで工程順にやさしく解説。タンク方式との違いや泡がきめ細かい理由もわかります。

スパークリングワインの造り方|瓶内二次発酵を解説という記事タイトルと、グラスの中を細かく立ち上るスパークリングワインの泡を背景にしたサムネイル
スパークリングワインの造り方|瓶内二次発酵を解説という記事タイトルと、グラスの中を細かく立ち上るスパークリングワインの泡を背景にしたサムネイル
目次

スパークリングワインのあの細かい泡は、どこから来るのでしょうか。結論から言うと、多くの高級スパークリングは「瓶詰めした後にもう一度発酵させ、そのとき出る炭酸ガスを瓶の中に閉じ込める」という方法で泡をまとっています。これが瓶内二次発酵、いわゆる伝統的製法です。この記事では、その一連の工程を順を追って解き明かします。読み終える頃には、ラベルの「méthode traditionnelle」の意味も、泡がきめ細かい理由も腑に落ちるはずです。

泡の正体は「瓶の中で起きる2度目の発酵」

まず全体像から押さえましょう。伝統的製法のスパークリングは、ざっくり2段階の発酵を経ています。

  • 一次発酵:ブドウ果汁を発酵させて、泡のない普通のワイン(ベースワイン)を造る
  • 二次発酵:そのワインを瓶に詰め、糖と酵母を足して密閉し、瓶の中でもう一度発酵させる

ポイントは2度目の発酵を「密閉した瓶の中」で行うことです。発酵では酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を出します。開いた容器ならガスは空気中へ逃げますが、王冠などで固く栓をした瓶の中では逃げ場がありません。行き場を失ったガスはワインに溶け込み、抜栓した瞬間にあの泡となって立ち上がるわけです。

赤・白・ロゼといった通常のワインがどう生まれるのか、発酵そのものの基本を先に押さえたい方は、醸造の基本フローを解説した記事も合わせて読むと理解が早まります。

グラスの中を細かく立ち上るスパークリングワインの泡

伝統的製法の工程を順に見る

ここからが本題です。瓶内二次発酵は手間のかかる工程の連続で、それが味わいと価格に直結します。代表的な流れを順番に追いましょう。

1. ベースワインを造る(一次発酵)

出発点は、泡のない辛口の白ワインです。多くの場合、複数の畑・品種・年のワインをブレンドして味の骨格を決めます。この配合作業を「アッサンブラージュ」と呼びます。単一年で仕上げるものもありますが、複数年をブレンドして毎年の味を安定させる考え方が伝統的です。ベースワインは酸がしっかりあって、あえて素っ気ないくらいが良いとされます。後の熟成で複雑さが乗るからです。

2. 糖と酵母を加えて瓶詰めする(ティラージュ)

ベースワインに、糖分と酵母を混ぜた液(ティラージュ・リキュール)を加え、瓶に詰めて王冠で栓をします。この足した糖こそが2度目の発酵の燃料です。ここから瓶の中で酵母が働き始めます。

3. 瓶の中でゆっくり発酵させる(二次発酵)

密閉された瓶の中で酵母が糖を分解し、アルコールがわずかに増え、炭酸ガスが発生します。逃げ場のないガスは液体に溶け込み、瓶内の圧力は大気圧の数倍にまで高まります。スパークリングの瓶が分厚く、コルクを留めるワイヤー(ミュズレ)が付いているのは、この高い圧力に耐えるためです。

シャンパーニュをはじめ、スパークリングの銘醸地は世界中にあります。どの国のどの地方でどんな泡が生まれるのか、地図で位置関係を確かめると産地ごとの個性がぐっと覚えやすくなります。

Vinova — 地図で学ぶ、世界のワイン
アプリで開く

4. 澱と長く寝かせる(シュール・リー熟成)

発酵を終えた酵母はやがて力尽き、澱(おり)となって瓶の底に沈みます。この澱を抜かず、あえて長期間ワインと接触させたまま寝かせるのが伝統的製法の要です。この状態を「シュール・リー」(澱の上、の意)と呼びます。

時間をかけて澱が分解される過程で、ワインにパンやブリオッシュ、トーストを思わせる香ばしい風味(自己消化香)が移っていきます。焼きたてのパンのような香りは、この澱との長い対話から生まれるものです。熟成期間は数年に及ぶことも珍しくありません。

地下カーヴで横向きに寝かされ澱とともに熟成するスパークリングワインの瓶

5. 澱を瓶口に集める(ルミュアージュ)

長い熟成を終えたら、瓶底に散らばった澱を取り除く準備をします。まず瓶を逆さ気味に立て、少しずつ回転させながら角度を変え、澱を瓶口(コルク側)に集めていきます。この作業がルミュアージュ(動瓶)です。かつては熟練の職人が専用の棚で手作業を続けましたが、現在は「ジロパレット」という機械で効率化するのが一般的になっています。

6. 澱を抜いて栓をし直す(デゴルジュマン)

瓶口に集まった澱を、いよいよ取り除きます。瓶口を氷結液に浸けて澱の部分だけを凍らせ、栓を開けると内圧で凍った澱の塊が勢いよく飛び出します。これがデゴルジュマン(澱抜き)です。澱が抜けて減った分は、糖分を調整した液(ドサージュ)で補充します。このドサージュの糖の量で、辛口から甘口までの味のタイプが決まるのです。最後に本コルクを打ち、ミュズレで固定して完成です。

タンク方式との違い ― なぜ泡のきめが変わるのか

すべてのスパークリングが瓶内二次発酵で造られるわけではありません。もう一つ代表的なのが、大きな密閉タンクで二次発酵をまとめて行う「タンク方式(シャルマ方式)」です。両者の違いを整理しましょう。

比較項目瓶内二次発酵(伝統的製法)タンク方式(シャルマ方式)
二次発酵の場所一本ずつの瓶の中大型の密閉タンク
澱との接触長期(複雑な熟成香が付く)短期が中心
泡の傾向きめ細かく持続する傾向軽やかで果実感が出やすい
手間・コスト高い抑えやすい
代表例シャンパーニュ、カヴァ、フランチャコルタ などプロセッコ など

どちらが優れているという話ではなく、目指す味わいが違います。ブドウの果実味や華やかさを前面に出したいならタンク方式、澱由来の複雑さと繊細な泡を求めるなら伝統的製法、という住み分けです。プロセッコの軽快さも、シャンパーニュの奥行きも、それぞれの製法があってこそ生まれます。

なお、澱との長期接触で生まれる香ばしさは、赤ワインなどで語られる樽由来の風味とは仕組みが別物です。熟成で香りが変わる別ルートに興味があれば、樽熟成で味がどう変わるかを解説した記事も面白く読めるでしょう。

「シャンパン」と呼べるものは限られる

ここまで読むと、「瓶内二次発酵で造ればシャンパンなのでは?」と思うかもしれません。しかし製法が同じでも、シャンパン(シャンパーニュ)を名乗れるものは厳しく限られています。フランス・シャンパーニュ地方で、定められた品種と製法で造られたものだけがその名を使えるのです。

この線引きは製法だけの話ではなく、産地・品種・栽培まで含めたルールで守られています。詳しくはスパークリングとシャンパンの違いを整理した記事と、シャンパーニュ地方だけがシャンパンを名乗れる理由で掘り下げています。同じ「泡」でも呼び名の背景を知ると、ラベルの見方が一段深まります。

泡立ちや色合いが少しずつ異なる3種のスパークリングワインを並べた俯瞰写真

まとめ

スパークリングワインの奥深さは、あの泡が生まれるまでの手間に凝縮されています。要点を振り返りましょう。

  • 泡は二次発酵のガス。密閉した瓶の中でもう一度発酵させ、逃げ場のない炭酸ガスをワインに溶かし込む
  • 伝統的製法は工程が多い。ティラージュ→二次発酵→シュール・リー熟成→ルミュアージュ→デゴルジュマンと続き、澱との長い接触が複雑な香りを生む
  • タンク方式との違いは目指す味の違い。きめ細かい泡と熟成香なら瓶内二次発酵、果実味と軽快さならタンク方式
  • 製法が同じでもシャンパンとは限らない。名乗れるのは産地・品種・製法の条件を満たしたものだけ

工程の名前と流れがつかめたら、次は「その泡がどこで生まれるのか」を地図で見てみてください。産地の位置関係がわかると、味の個性がぐっと立体的に感じられます。飲むときは20歳以上・適量を心がけて、一杯の泡の背景に思いを馳せてみましょう。

Vinova — 地図で学ぶ、世界のワイン