ワイン売り場で「サステナブル」「ヴィーガン」と書かれたボトルが増えました。どちらも“地球にやさしそう”な響きですが、指しているものはまったく別です。結論から言うと、サステナブルは畑や造りが環境に配慮しているか、ヴィーガンは造る過程で動物由来の材料を使っていないかを表します。この記事では、両者の違いを軸に、ビオやオーガニック、自然派といった紛らわしい言葉との関係まで、ひとつずつ整理します。
サステナブルとヴィーガンは「見ている場所」が違う
まず全体像です。この二つは対立する概念ではなく、そもそも評価している対象が異なります。
| 種類 | 何を見ているか | 主な関心 |
|---|---|---|
| サステナブルワイン | 畑・醸造所・経営の環境負荷や持続性 | 水・エネルギー・生物多様性・社会 |
| ヴィーガンワイン | ワインを澄ませる工程で動物由来の材料を使うか | 動物性成分の不使用 |
つまり、サステナブルなワインがヴィーガンとは限らず、ヴィーガンワインが必ずしも環境配慮を意味するわけでもありません。両方を満たすボトルもありますが、名乗る観点がそれぞれ違うと考えるのが正確です。
意外に思われるのが、ワインが「植物からできているのにヴィーガンでない場合がある」という点でしょう。カギを握るのは、造りの最終盤にある「清澄(せいちょう)」という工程です。

ヴィーガンワインとは — 清澄剤に動物由来を使わない
搾ったばかりのワインは、酵母や果実の微細な粒子で濁っています。これを澄ませ、口当たりを整えるために「清澄剤(フィニング剤)」を加える手法が古くから使われてきました。伝統的な清澄剤には、次のような動物由来のものが多くあります。
- 卵白(アルブミン):赤ワインの渋みを穏やかにする定番
- カゼイン:牛乳由来のたんぱく質。白ワインの色や雑味の調整に
- ゼラチン:動物のコラーゲン由来。濁りや強い渋みを取る
- アイシングラス:魚の浮き袋由来。白ワインを澄ませる
これらはワインに残らず、粒子とともに取り除かれるのが原則です。それでも「動物由来の材料を使った」という点で、ヴィーガンの基準からは外れます。
一方でヴィーガンワインは、こうした動物性の清澄剤を使いません。代わりにベントナイト(粘土鉱物)やエンドウ豆・じゃがいも由来のたんぱく質、活性炭といった植物性・鉱物性の材料を用います。あるいは清澄そのものをせず、時間をかけて自然に澄ませる造り手もいます。
濁りをあえて残すスタイルも増えました。果皮ごと醸すオレンジワインやペットナットの流行は、無濾過・無清澄で仕上げる例が多く、結果的にヴィーガンと相性がよい造りになっています。
サステナブルワインとは — 畑と醸造所の持続性
サステナブルワインは、味の話というより「どう造っているか」の話です。環境と社会への負荷をできるだけ小さくし、その土地でワイン造りを長く続けられるようにする、という考え方が根にあります。具体的には、次のような取り組みが含まれます。
- 水とエネルギー:使用量を減らし、再生可能エネルギーへ切り替える
- 土壌と生物多様性:畑にカバークロップを植え、益虫や在来種を守る
- 農薬・化学肥料:使用を最小限に抑える
- 社会面:働き手の労働環境や地域社会への配慮
注目したいのは、サステナブルが必ずしも「無農薬」を意味しない点です。あくまで持続可能性という広い枠組みであり、必要に応じて最小限の農薬を認める認証も存在します。「環境への総合的な配慮」と理解するのが実態に近いでしょう。
なぜ今これが広がっているのか。背景には温暖化への危機感があります。畑の環境が崩れれば、ワイン造りそのものが立ち行かなくなるためです。気候とワインの関係は映画『サイドウェイ』が広げたピノ・ノワール人気の話のような、繊細で冷涼を好む品種を思い浮かべると実感しやすいかもしれません。暑さに弱い品種ほど、畑を守る取り組みの重みが増します。

ビオ・オーガニック・自然派との関係を整理する
ここまで来ると、「ビオワインやオーガニックとは何が違うの?」という疑問が湧くはずです。これらは重なり合う部分もあり、混同されがちです。関係を一枚に整理してみましょう。
| 呼び方 | 主な意味 | ポイント |
|---|---|---|
| オーガニック(ビオ) | 認証機関の基準で有機栽培されたブドウを使う | 合成農薬・化学肥料を原則不使用。認証あり |
| ビオディナミ | 有機に加え、独自の暦や調剤を用いる農法 | オーガニックより踏み込んだ考え方 |
| 自然派(ヴァン・ナチュール) | 添加物を極力使わず自然に近い造り | 明確な公的定義は乏しく、造り手の裁量が大きい |
| サステナブル | 環境・社会への総合的な持続性 | 無農薬とは限らない |
| ヴィーガン | 動物由来の清澄剤を使わない | 栽培方法は問わない |
- オーガニック/ビオは「栽培」に軸足があります。ビオはフランス語圏などでオーガニックを指す呼び方で、中身はほぼ同じです。
- 自然派は栽培から醸造まで人の介入を抑える立場で、公的な定義がはっきりしないぶん、実態は造り手ごとに幅があります。
- これらは互いに排他的ではありません。オーガニックかつヴィーガンかつサステナブルという一本もあり得ます。
言葉が多くて混乱しやすい領域です。品種や産地の基礎とあわせて、ワインの造りの流れを一度押さえておくと、こうしたラベルの意味が一気につながって見えてきます。
清澄・発酵・熟成といった造りの工程を知ると、「ヴィーガン」「サステナブル」の意味が腑に落ちます。ワインの基礎を、用語につまずかない順番で整理してみませんか。
Vinova — 地図で学ぶ、世界のワインアプリで開くラベルでの見分け方と選ぶときの視点
最後に、店頭やオンラインでの見つけ方です。表示はまだ発展途上で、国や認証機関によってマークや基準が異なります。だからこそ、次のポイントを知っておくと迷いにくくなります。
- ヴィーガン:ボトルやラベルに「Vegan」「Suitable for vegans」と明記されることが多い。第三者のヴィーガン認証マークが付く場合もある
- オーガニック:各国・地域の有機認証マークが目印。表示ルールは認証機関ごとに違う
- サステナブル:産地ごとの持続可能性プログラムのロゴが付くことがあるが、名称は地域で多様
大切なのは、これらの表示が「味の良し悪しを保証するものではない」という点です。あくまで造り方の姿勢を示すラベルであり、おいしさは別軸の話になります。環境や動物への配慮に共感できるなら選ぶ理由になりますし、まずは味で選びたいなら気にしすぎる必要はありません。
価格の高さについても同じです。手間のかかる造りは価格に反映されやすいものの、高いほど良いとは限りません。値づけの理由が気になる方は、ロマネ・コンティが高価な理由を読むと、ワインの価格がどう決まるかの見取り図がつかめるはずです。
なお健康面に触れておくと、どんな造り方のワインでも、楽しむのは20歳以上で適量を守ることが前提です。「オーガニックだから体にいい」といった効能を期待するものではない、と覚えておいてください。
まとめ
サステナブルとヴィーガン、二つの違いを最後に振り返ります。
- サステナブルは畑と醸造所の環境・社会への配慮。無農薬とは限らず、持続可能性という広い枠組み
- ヴィーガンは動物由来の清澄剤を使わない造り。栽培方法そのものは問わない
- オーガニック・自然派とも重なり合うが、それぞれ見ている観点が異なる。一本で複数を満たすこともある
ラベルの言葉に振り回されないコツは、ワインの造りの流れを一度きちんと理解しておくことです。清澄や発酵の基礎から、気になる用語をアプリで確かめてみてはいかがでしょうか。




