ニーダーエステライヒ州
Niederösterreich
州(包括的生産地域)の中に8つのD.A.C.(限定的生産地域)を擁する。ヴァッハウ、クレムスタール、カンプタール、トライゼンタール、ヴァーグラム、ヴァインフィアテル、カルヌントゥム、テルメンレギオン。いずれもGebietswein(地域名)・Ortswein(村名)・Riedenwein(単一畑名)の3段階ピラミッドを備える。
ニーダーエステライヒ州はオーストリア東北部に位置する最大の州で、栽培面積26,732haは全体の約60%を占める。最重要品種グリューナー・ヴェルトリーナーの本拠地で、同州栽培面積の約49%を占める。州内の8つのD.A.C.は、冷涼な北部(ヴァインフィアテル)、ドナウ川沿いの高級白ワイン産地群(ヴァッハウ・クレムスタール・カンプタール・トライゼンタール・ヴァーグラム)、比較的温暖なパノニア系(カルヌントゥム・テルメンレギオン)の3つに大別すると理解しやすい。気候はアルプスからドナウ渓谷を吹き抜ける冷風とチェコ方面からの北風、東南のパノニア平原からの温風がせめぎ合う。
重要ポイント
- 栽培面積26,732haでオーストリア全体の約60%を占める最大の州
- グリューナー・ヴェルトリーナーの本拠地で、州の栽培面積の約49%
- 州内に8つのD.A.C.(限定的生産地域)を擁する
- 北部・ドナウ沿い・パノニア系の3タイプに大別すると理解しやすい
気候風土
ドナウ川の西にあるアルプス山脈からドナウ渓谷を吹き抜ける冷風と、ヴァインフィアテル北方のチェコ方面からの冷たい北風の影響を大きく受ける。東南のハンガリーに近づくほどパノニア平原からの温風の影響が強まる。土壌は世界遺産ヴァッハウの急斜面の印象と異なり、片麻岩や花崗岩は全体の約6%に過ぎず、5割強はレス、3分の1ほどは新第三紀の粘土質シルト・砂・礫などの非固結性土壌である。
3つの産地グループ
北部のヴァインフィアテルは白胡椒的な香りのグリューナー・ヴェルトリーナー。ドナウ系(ヴァッハウ、クレムスタール、カンプタール、トライゼンタール、ヴァーグラム)はグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの高級白。パノニア系のカルヌントゥムとテルメンレギオンはふくよかな白と、近年注目される赤ワインを特徴とする。
主要品種
グリューナー・ヴェルトリーナーを筆頭に、リースリング、ロートギプフラー、ツィアファンドラー、ツヴァイゲルトが主要品種。ロートギプフラーとツィアファンドラーはテルメンレギオンの固有白品種である。
主要ブドウ品種
- グリューナー・ヴェルトリーナー
- リースリング
- ロートギプフラー
- ツィアファンドラー
- ツヴァイゲルト
サブ地区・アペラシオン(8)
- ヴァッハウヴァッハウD.A.C.(2020年ヴィンテージから白・ロゼ・赤)。Gebietswein・Ortswein(指定22村)・Riedenwein(指定157単一畑)の3段階。Riedenweinはグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの単一品種のみで補糖不可。Vinea Wachauの伝統格付けはD.A.C.発足後も有効で、Steinfeder(KMW15〜17度・アルコール11.5%以下・辛口)、Federspiel(最低17度KMW・11.5〜12.5%・カビネット相当)、Smaragd(最低18.2度KMW・12.5%以上)に区分する。
- クレムスタールクレムスタールD.A.C.(2007年ヴィンテージから白・辛口)。品種はグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリング。最低アルコールはGebietswein11.5%、Ortswein(指定9村)12%、Riedenwein12.5%、Kremstal DAC Reserve13%。クラシックは貴腐や樽香があってはならず、レゼルヴェはわずかな貴腐や樽熟成香が許される。
- カンプタールカンプタールD.A.C.(2008年ヴィンテージから白・辛口)。品種はグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリング。最低アルコールはGebietswein11.5%、Ortswein12%、Riedenwein12.5%、Kamptal DAC Reserve13%。クラシックは貴腐や樽香があってはならず、レゼルヴェはわずかな貴腐や樽熟成香が許される。
- トライゼンタールトライゼンタールD.A.C.(2006年認定)。グリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの辛口で、Gebietswein・Ortswein・Riedenweinの3段階をもつ。
- ヴァーグラムヴァーグラムD.A.C.(2021年ヴィンテージから白・ロゼ・赤)。Gebietswein(13品種とそのブレンド、ゲミシュター・サッツも可)・Ortswein(指定27村・単一品種のみ)・Riedenwein(認可された単一畑)の3段階。
- ヴァインフィアテルヴァインフィアテルD.A.C.(クラシックは2002年、レゼルヴェは2009年、グローセ・レゼルヴェは2020年ヴィンテージから)。品種はグリューナー・ヴェルトリーナーのみ。クラシックは最低アルコール12%・残糖最大6g/L、レゼルヴェとグローセ・レゼルヴェは最低13%・辛口。クラシックは胡椒の風味をもち貴腐や樽香があってはならず、レゼルヴェ以上はわずかな貴腐や樽熟成が許される。なおヴァインフィアテルD.A.C.はRiedenwein・Ortswein表記を導入していない唯一のニーダーエステライヒD.A.C.である。
- カルヌントゥムカルヌントゥムD.A.C.(2019年認定)。赤はツヴァイゲルト/ブラウフレンキッシュ主体、白はグリューナー・ヴェルトリーナーやヴァイスブルグンダー、シャルドネを用いる。
- テルメンレギオンテルメンレギオンD.A.C.(2023年認定)。グリューナー・ヴェルトリーナーが主流の他産地と異なり、ツィアファンドラーとロートギプフラーという固有白品種、および赤品種を擁する。Gebietswein・Ortswein・Riedenweinの格付け体系をもつ。